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2018年6・7月号 vol.20

三遊亭歌橘「ASHIKAGAN GRAFFITI」

2018年05月31日 18:07 by howdys

三遊亭歌橘「ASHIKAGAN GRAFFITI」

 ご機嫌宜しゅうございます。よく五月病なんてェーことを申しますが、わたしの場合、心が病んだ際の処方箋は「稽古」と「掃除」です。師匠は「壁に打ち当たった際は稽古するしかない」で、お内儀さんは「とにかく掃除しなさい」だった。若かりし頃は言葉の意味を理解が出来ず、憂さを晴らす為、ひたすら酒を呑んだものです。

 先だって、ある方に言われたのですが「師匠という存在が居るのが羨ましい」と、あーそう言われれば自分の行動言動を抑え付けて下さる存在は有り難いものだと思います。しかし、その師も世を去り、早一年。徒弟制度経験者しか分からぬ事、師の去った後の弟子というのは、クソつまらねー日々の始まりなのです。

 子供の頃、生まれ育った足利の街に息苦しさを感じました。四方八方を山に囲まれて、
まるで

「山の向こうには巨人が居るのか⁉︎」

そんなことを思わせる街から離れたい思いは強まるばかり、最初の脱出計画は、十三歳の時だった。自分と同じく家にも学校にも居場所の無い、カトちゃん、ガナと一念発起し「こんな街から逃げ出そう!」と、三匹の悪童は野州山辺駅から電車に乗って、無人駅から無人駅まで。そして、下りた駅は「県(あがた)駅」。

 街灯一本、周りは延々と続く田園風景。クリント・イースト・ウッド主演の「アルカトラズの脱出」しかり「アシカガの脱出」を試みた訳だが、何故、この「県(あがた)」を選んだのだろう? 確か、ガナくんが「県(あがた)は無人島だから、そこで自給自足生活しよう」と言った。……筈。

 今ツッコむと、だいたい、無人島って電車で行けるのかよ⁉︎ だぜ!

 駅を下りるが行けども行けども何も無い。ドドドッという轟音に振り向くと猪と遭遇した。ポンポコと腹鼓する方を見たら狸が宴会していた。それを目の当たりにしたオレたちのリーダー格、カトちゃんが声を荒げる。

「オレたちは、この無人島で生きて行かなければならない!」

いやいや、野州山辺駅から電車に乗ること約二十分。辿り着いた地は、まだ栃木県足利市。言わずもがな、御釈迦様の掌なのだ。脱出計画遂行より、三時間。当時、十三歳、中学一年生の我々三人組は空腹に勝てなかった。
松鶴家千代若・千代菊師匠ばりの一言

「もう帰ろうよ……」

この言葉を合図に電車に乗り込んで足利市駅を目指した。

 後日談。 独立心が旺盛な三人組は、この時の行動通り、みんな早々と地元を離れた。ガナくんはシアトルに留学、カトちゃんと自分は江戸に向かった。その後、この三人が揃うことは一度も無い。現在に至る。

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